2015年12月06日

日本SFコミュニティについて考えること(その1)

 藤田直哉さんのツイッター発言と、そこからおこなわれたやりとりのまとめを読んだ。このTogetterというのは、ツイッターアカウントを持つ人が自分や他者の発言を自由にまとめられる機能のようだ。まとめる動機は、おそらく「純粋に楽しいから」「誰かをつるし上げて嘲笑したい」「自分の意見を広く訴えたい」といったものだと思う。
 このまとめ機能の是非については後で書くとして、藤田さんは私が2015年11月15-16日に書いたブログ記事(削除済み)に刺激を受けて持論を展開なさったようだ。だから私もいろいろと思うところはあった。

Togetterの関連記事
・「SF作家クラブではいじめが横行し足抜けが許されない」それは事実?
http://togetter.com/li/902968
・日本SF作家クラブの腐敗と不正に関する私的見解
http://togetter.com/li/907958

 私は以前に日本SF作家クラブの会長を務めたが、任期半ばで辞任し、退会している。またその後、日本SF大会のゲストオブオナーに選んでいただき、つくばの大会に出席した。この大会自体はとても楽しいものだったが、その後私がひとつ勘違いの発言をブログに書いたことで一部のSFファンダムから強い怒りを買い(と私は感じた。それから実際はさほどの勘違いでもなかったと後で思ったのだが、これについては措く)、精神的にも疲弊して、現在に至っている。
 以前のブログにも書いたように、私はいま日本SFの関係者とはつきあいを遠慮している。こうしたことをもって、「瀬名は一部の問題と全体を取り違えている」と批判なさる方が少なくない。私はつねに説明しているつもりなのだけれど、いまの私はSFについて考えたり、刺激を受けたりすると、左腕から胸にかけて震えが起こったように感じられ、とてもつらい状態になり、原稿執筆にも支障が出てしまう。これは相手がどなたであろうと変わらず、また自分のかつてのSFに関する原稿を読むだけでも同じことが生じる。そのため私はSFに関係する仕事をすべて辞退している状態だ。アンソロジーへの収録、SF作品の単行本化や文庫化、といったこともお断りしている。このような状態であることは、どうかご理解をいただきたいのである。
 私はSFのことを考えずにこれから生きていきたいと願っている。私はまだ小説を書いていきたいし、いまも私の小説を待ってくださっている読者はどこかにいると信じたい。
 しかしなぜ私がこのような状態になったのだろうと考えると、やはり日本のSFコミュニティに強い絶望感を持ったからなのだ。一時は非常に疎外感を覚えたのも確かであるし、現在もその感覚はいくらか残っている。いまはおつきあいを辞退しているが、もともとそのような決断をすることになった理由は、絶望感と疎外感だったのだ。
 なぜSFコミュニティはこのようであるのだろうか、少しでもよい社会にすることはできないのだろうか、というのは、私の20年来のテーマだった。デビュー以来20年だから、もう私はSFコミュニティ問題に関するプロの研究者だといってもいいくらいだ(笑い)。たぶん日本で誰よりもこの問題を考えてきたひとりだと思う。
 このような文章を書くのはとても気力と体力を消耗するものだ。しかし文章を書くことで気持ちがまとまる、ということもあるだろうし、論点を整理することで社会が一歩前へ進めるようになるかもしれない、という願いもある。
 前置きが長くなったが、そこで時間をかけてこの文章を書いてみた。
 読む方々のスタイルをこちらが束縛することはできないが、できれば反射的に反応なさるのではなく、何度か読んでいただければと思う。
 文体もややゆるやかな調子にしてみる。なるべく誤解が広がらないような書き方にしたいと思っているが、ひょっとしたら細かいところに思い違いの記述が出てしまうかもしれない。ただそれは単純なミスであって、他意はないのだということをどうかご理解いただきたい。
 具体的な事例が提示されないとイメージも沸かず、解決策へ向けての建設的な議論ができない、ということもあると思うので、上記のTogetterの発言にいくつか言及させていただいた。また私の思い出にもいくつか触れた。(言及元の発言者に対して決して私が悪感情を抱いているわけでないことは、どうかご理解をいただきたい。言及したためにそこからおかしな言い争いが生じるような事態にはしたくない)
 以前に書いた次の記事も同様のテーマを扱っているので、ここに紹介しておく。

・講演資料 SFセミナー 2001
http://www.sfseminar.org/arc2001/sena/sfhtml/sftop.html
・シムノンを読む 第5回『黄色い犬』
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20150407/1428362826

(その2に続く)
posted by Hideaki Sena at 17:05| 仕事